エルヴィス・プレスリー『On Stage: Legacy Edition』

1970年にリリースされた『On Stage-February,1970』がこの度、40周年記念レガシィ・エディションとして再発されることになった。

 

On Stage: Legacy Edition (Dig)

On Stage: Legacy Edition (Dig)

 

 

まず、今回のレガシィ・エディションとはいかなるものなのか、簡単に説明しておこう。

1968年の12月3日に全米NBCで放映された番組「エルヴィス」(通称「'68カムバックスペシャル」)において、ライヴ・シーンにカムバックしたエルヴィスだが、69年の7月31日、ラス・ヴェガスのインターナショナル・ホテルにおいて、ついにエルヴィスはステージに立って歌うこととなる。

その後、8月28日まで実に全57回のショーをエルヴィスは同地で行ったわけだが、その時の模様は8月22~26日の音源からピックアップされる形で、69年に出た2枚組アルバム『From Memphis To Vegas/From Vegas To Memphis』、邦題『豪華盤プレスリー・イン・パースン』のディスク1に収められることとなる。

 

From Memphis To Vegas / From Vegas To Memphis

From Memphis To Vegas / From Vegas To Memphis

 

 

翌年、ディスク1とディスク2はそれぞれ独立した形態でリリースされることになり、ディスク1に関しては『Elvis In Person At The International Hotel , Las Vegas , Nevada』、邦題『エルヴィス・オン・ステージ Vol.3』としてリリースされる。

 

エルヴィス・オン・ステージ, Vol.3

エルヴィス・オン・ステージ, Vol.3

 

 

さて、70年1月~2月、エルヴィスは前年同様に、ラス・ヴェガスのインターナショナル・ホテルにおいて公演を行う。 そして、2月16~18日にかけての音源をピックアップして、『On Stage-February,1970』、邦題『エルヴィス・オン・ステージ Vol.2』がリリースされる。

  

エルヴィス・オン・ステージ Vol.2

エルヴィス・オン・ステージ Vol.2

 

 

だが、「Yesterday」と「Runaway」の2曲に関しては、 前年8月25日の同所でのライヴ音源が使用されており、この辺りの事情が『On Stage-February,1970』の厄介な点ではある。

ところで、前作『Elvis In Person At The International Hotel , Las Vegas , Nevada』がエルヴィスのヒット曲がずらっと並ぶ曲構成だったのに対し、『On Stage-February,1970』は収録曲がすべてカヴァーであり、トニー・ジョー・ホワイト、デル・シャノン、ニール・ダイアモンド、ビートルズ、ジョー・サウス、CCRの曲が取り上げられていることは見逃せないポイントだ。

 

そして、同年8月。エルヴィスはラス・ヴェガス公演を三たびインターナショナル・ホテルで行う。 この模様は映画『Elvis-That's The Way It Is』、邦題『エルヴィス・オン・ステージ』として公開されることになり、そのサントラとして『Elvis-That's The Way It Is』がリリースされる。 邦題は『エルヴィス・オン・ステージ Vol.1』。

 

 

だが、このアルバム、実はライヴ音源は12曲中2曲のみ。「I Just Can't Help Believin'」と「ふられた気持」だけである。残り10曲は6月にナッシュヴィルのスタジオで録音されたもの。なので、映画の疑似サントラ盤と位置づけるのが正解であろう。

ここまで説明したところで、ようやく今回のレガシィ・エディションの説明に入ることが可能となるだろう。

『Elvis In Person At The International Hotel , Las Vegas , Nevada』と『On Stage-February,1970』の2枚、そこにリハーサル音源や、FTDの再発で08年に初出となったレア音源などを足す形でリリースされたのが、今回の『On Stage: Legacy Edition』なのだ。(なお、『Elvis-That's The Way It Is』に関しては、今回のレガシィ・エディションの対象から外されている*1)。

 

さて、スワンプ・フィーリングなどを取り入れて、70年代のロックの時代になってもエルヴィスが第一線でいられたのは、ジェームス・バートンをギタリストとして起用したからだと言っても過言ではないのだが、そのことは今回の『On Stage: Legacy Edition』を聴いて頂ければ解っていただけると思う。
50年代のエルヴィス・ナンバーが70年代型にリファインされるにあたって核となったのは、間違いなくジェームス・バートンのギターであるし、他人の曲をスワンプ・ロックとしてカヴァーする際にあたって核になったのも、間違いなくジェームス・バートンのチキン・ピッキングである。そのギターを従えて、完璧にどんな歌も自分の歌にしてしまうエルヴィス。エルヴィスの70年代のスタートは間違いなく充実していた。それが解るという意味で非常に素晴らしい、今回の再発だと思う。

*1:後に2014年に同盤もレガシィ・エディションが発売されている。なお、日本でのタイトルは『エルヴィス・オン・ステージ Vol.1 レガシー・エディション』であった