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「城平京さんの『虚構推理』はどういう作品なのか?」を呟いてみた件をまとめた件

ミステリ

第12回本格ミステリ大賞の小説部門城平京さんの『虚構推理 鋼人七瀬』が決定した、


虚構推理 鋼人七瀬 (講談社ノベルス)

虚構推理 鋼人七瀬 (講談社ノベルス)


同作品が同賞を受賞したという一報が出た直後から、私のTL上には同作の受賞を認めないという意見が現れていた。更には、本格としてもそもそも認めないという意見も散見された。
一方で、同作の受賞を肯定する意見もあり、どうも論争のようなものが起こっている様子。
既にそういう論争は鎮火しているようだが、私自身は昨年の発売時に同作を読んでいなかったこともあり、「祭」に乗り遅れた感があって悔しくもあったので、これを機会に読んでみることにした。


以下、読後の感想を記す。
なお、以下は僕が5/18にツイートしたものを纏めたものである。


※注意
以下の感想では、山口雅也さんの『奇偶』の真相について触れております。
未読の方はくぁwせdrftgyふじこlp


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さて。『虚構推理』を昨日読了しました。「程度の低い本格だ」派の方は田代裕彦さんの某作品との類似をあげて否定しているようですが。僕が『虚構推理』を程度の高い本格だと判断するにあたって思い浮かべたのは円居挽さんの『丸太町ルヴォワール』と山口雅也さんの『奇偶』でした

丸太町ルヴォワール (講談社BOX)

丸太町ルヴォワール (講談社BOX)

奇偶

奇偶


『虚構推理』も『丸太町』も法廷ものの変型です。どちらも嘘は手段として認められています。聴衆に「正解」だと思わせるに値する説得力を持った解決編を用意できれば良いわけですただし、求められるのは2択の回答です『丸太町』は論語は犯人か否か、『虚構推理』では鋼人七瀬は存在するか否か。

2択なのですが、
では否である場合、どういう「否」なのかこれを主人公側は用意しなければなりません。これが両者の共通点その2です。

ところが、この両作品には根本的な違いがあります。『丸太町』は主人公たちが論を重ね目指すべきは真実です。『虚構推理』は主人公たちが目指すべきは真実に反する虚構です。ここが『虚構推理』の面白いところです。飛躍です。嘘を真実だとどうやって思わせるのか?ここで魅せてくれます。

補足しますが。『丸太町』の場合はここで、真実の奥にある真実を引き出すためにどんでん返しをくり返しまくるという、アクロバットどんでん、解決ドミノ倒しを見せてくれました。そこが『丸太町』の魅力でした。元の事件自体はこじんまりしてるのに、よくぞここまで広げたなと当時は驚いたものです。

さて。『虚構推理』における真相は物理法則を無視しきったものです。一方『奇偶』における真相も物理法則を無視したものです。そこに共通点がまずあります。しかし、この2者は真逆の位置に存在します。まず、『虚構推理』は前半に真相は示されています。『奇偶』は最後に真相らしきものが示されます。

まず『奇偶』ですが。こちらは最初から執拗に「偶然」という事象について描写していくことで、
あの「それ以外にはありえない」「物理的に不可能だけど、それ以外にありえないから仕方ない」という真相を、引き算の総力戦で引き出します

『虚構推理』はとりあえず物理法則を無視した解答は在りますが。これとは別の解答を用意したいとばかりに、足し算の総力戦で物理的に説明のつく解答、説得力のある(と思える)解答を導き出します。歪ではあるけど、「偶然」すらも利用してまっすぐとゴールに向かう解答を用意します。

ここで意識してしまうのは、『虚構推理』の方法論は一体何かということです。これは本格ミステリー小説を書く上で、作家がとることが多いであろう方法論なんですよね。

とりあえず、説明が一見不可能な事件を用意した。物理法則を無視した解答を示すのは可能だ。それをちらつかせることで、不可能性も上がる。だが、解答を用意しないといけない。なら、どうするか。まっすぐゴールへと向かっているように見える説得力のある解答をこしらえよう。

そのためには途中で「これでは反論に遭うわなあ」という不採用になる解決編もあるでしょう。そこで活かせるいくつかの部分は次に考案される解決編に含まれてそこに流用されることもあるでしょう。

つまり、城平京さんの『虚構推理』は作者と一緒に本格ミステリーが書かれていく様を見守るという、メタもメタな本格ミステリーです。そして、作品で問われるのは「真相はなんだ?」ではなく「もっともらしく見える真相はなんだ?」です

「もっともらしく見える真相はなんだ?」という問題に対して本格で言われるところの 「論理」を使ってみよう。『虚構推理』はそういう本格です。程度が低いとも思いません。探偵という「装置」をどうするか?そうそうおどろおどろしい事件なんか起こるか?その解決もできていると判断します。

チラシの裏
九郎の声が神谷浩史さんで、岩永の声が加藤英美里さん、そして紗季の声が斎藤千和さんの声で再生されたのですが、私はどうすればいいんでしょうね。


あ、最後の引用は不要でしたね。失礼。挿みました。



なお、『虚構推理』がミステリーではない派の感想としては、
このようなものがあるようです。
「安眠練炭(aNmiNreNtaN)さんによる城平京『虚構推理 鋼人七瀬』の感想」
http://togetter.com/li/144514