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久弥直樹の『サクラカグラ 1』を読んだ。

ミステリ

※以下の文章は久弥直樹の『サクラカグラ 1』の内容に触れています。

 

 

 久弥直樹の『サクラカグラ 1』(星海社)を読んだ。

 

サクラカグラ 1 (星海社FICTIONS)

サクラカグラ 1 (星海社FICTIONS)

 

 

 

 同作は『ONE~輝く季節~』『Kanon』のシナリオを担当した久弥直樹の初の長編であり、イラストを岸田メルが担当している。学園ミステリという触れ込みではあったし、あの久弥直樹の小説ということもあって早速購入して読んでみた。


 ストーリーは、“この世界に存在しない少年”を見てしまった高校1年生の上乃此花が、「僕が誰に殺されたのか知りたい」と訴える少年の犯人探しを手伝うことになるところから始まる。一方その頃、学園の中等部に通う“ぼく”は夜の校舎で悪と戦う凛音と名乗る少女と偶然出会って以来、凛音の奇妙な悪者退治につきあうことになる。学園に現れる目に見えない悪者の存在を感じることができるのは、なぜか凛音だけだった……というのが大まかなストーリーだ。
 

 この時点で勘の鋭い方なら、上述のストーリーの「一方その頃」以降が『Kanon』の川澄 舞シナリオにかなり近いものであることがわかるだろう。

 

 

 実際、凛音と舞との間にはかなりの部分で共通点が見られ、舞シナリオのAnotherバージョンといっても差し支えないだろう。舞シナリオとの類似点の多さゆえに、『Kanon』ファンであれば『サクラカグラ 1』を様々な意味で楽しめるはずだ。もっといえば、『Kanon』ファンであればある程、『サクラカグラ 1』のミステリー要素を楽しめるだろう。

 

 さて。『サクラカグラ 1』は、「この世界に存在しない少年が誰に殺されたのか」という問いが設定されているミステリではあるのだが、この問いを上乃此花は解くことができない。登場人物の誰も解くことができない。その問いに関する答えは終盤で明かされるが、物語の登場人物たちは犯人を除けば誰もその真相にたどり着くことはできないのだ。そのような事態が引き起こされたのは、読者に向けて仕掛けられたトリックと作中の人物たちに仕掛けられたトリックがまるで違う物で、作中の人物たちに仕掛けられたトリックが看破されていないためである(そもそも問いが設定されていることを作中レベルで認識できている登場人物は2人だけである)。タイトルに『サクラカグラ 1』とあるように、今後も続きが出るのは明らかだが、それでも作中の人物たちに仕掛けられたトリックが今作で破られなかったことに対してはちょっと不満を覚えないわけではない。それにしても、どうやってあのトリックを作中人物たちが破るのかは非常に気になるわけで、続きを読んでみたいとは思っている。

 

 ただ、ミステリとして見た場合、一点だけ気になったことがあって。それについては、ネタバレになるので今は書けないが、この手法を用いたミステリにおける技術論ではないがつっこんで書けそうだ。2巻が出たタイミングで書いてみたいと思う。