Features(July, 2013)

以前お仕事で書いた音楽関係の原稿をまとめてみます。掲載誌の「ボカマガ」自体はもう終わっていますし(今後書籍化されることもないでしょうし)、アーカイヴ化しておこうという試みです。

 

Redbanke16「A HOUSE IS NOT A HOME」

 数多くのカヴァーが残されている同曲だが、最初にヒットしたのはディオンヌ・ワーウィック版。B面曲ながら1967年のビルボード全米第71位に輝いている。画像にもあるようにセプター・レコードからのリリース。ディオンヌ版ではストリングスとコーラスでドラマティックに盛り上げていたが、このカヴァーではストリングスは控え目に深いエコーのかかったルカの歌声だけで盛り上げる。歌手・巡音ルカのキャリアにおける最高の名演。ミックスも素晴らしい。

 

betcha「Goodbye Keeper, Goodbye Capsule

 サイケデリックな音像、複合拍子、そしてカラフルなメロディ。そこに60年代半ばのブライアン・ウィルソンのような佇まいを見出すことができるが。エフェクト処理されたミクのヴォーカルやドラムの音といい、ここにある音は間違いなくマイ・ブラディ・ヴァレンタインやザ・ディランズの系譜にあるものだろう。音の洪水に垣間見えるポップさはイノセンスの儚さを暗喩しているのか。ミクが虚空にカタカナで投げる歌詞のかたまりにもドキッとさせられる。

 

miyatchiken「恋はマシュマロ気分」

 1980年代のテクノ・ポップスで聴かれたようなシンセの音で始まるイントロ。そこにまず嬉しくなるが。ホワイト・ドゥーワップ系譜にあるご機嫌なコーラスや、コード進行、それに何より「マシュマロ」というキーワードは黄金時代のアメリカン・ポップスの流れにあるもの。ミクであるから難なく高音も歌えるはずなのに、サビでは背伸びして歌っているような感じがあり、そういった「無理している感じ」もガールズ・ポップスならではのかわいらしさだ。

 

ノラフィ「愛することって」

 かつてノラフィさんは小沢健二「流れ星ビバップ」をカヴァーしていたが、ひょっとするとこの曲はノラフィさんなりの「流れ星」なのかもしれない。跳ねまくるドラムもそうだが、ここまでグルーヴィーなオルガンを聴いていると、そんな深読みをしたくなるほど。間奏のギター・ソロでのロカビリー文法もお見事! そして何よりミクの声と歌い方。非常にオリジナリティの高い調教っぷりであり、今一番ミクをかわいらしく歌わせるのは間違いなく彼だろう。

 

PanChiqueRin(ぱんちくりん)「恋は焦らして」

 シュープリームスの1966年全米第1位「恋はあせらず」。同曲のビートに魅せられてリズム・パターンを踏襲した曲は古今東西数多く存在するが、この曲もその1つ。ぱんだっちさんのガッツのあるドラム、ちくわさんがギターで作り出すグルーヴ感も非常に魅力的だ。そして、跳ねるビートに乗せられて歌われるのはデートに浮かれる女の子のドキドキ。この組み合わせも見事。なお、歌詞の中に出てくるママが好きだという歌、邦題は「恋はくせもの」である。

 

うめこんび「ナイショのスウィングマジック☆」

 冒頭いきなりの結月ゆかりによる「もっしもーし」という声に蕩けてしまうが。その後のスキャット、そしてジャングル・ビートで迷い込んでいる内に始まるのは、ジム・クウェスキン・ジャグ・バンドやダン・ヒックスのようなグッド・タイミーなグルーヴ感を持つご機嫌なジャグ・バンド・ミュージック。うめこんびさんのギターのピッキングを堪能する作品なのかと思えば、ゆかりのセリフやスキャットがいちいちかわいくて艶っぽくて、耳がついついそちらに。

 

ManP「おじょうさん in the JP」

 ギター、ベース、ドラム、バンジョーアコーディオンという編成によるカントリー・ロック。アコーディオンがアクセントになっており、このエキゾチムが郷愁を呼び起こしている。ベースのグルーヴ感により前へ前へと進む中、IAは「だから愛してるって言ってくれないか」と先へ進もうとするのを止めようとする。この対比がたまらない。強がりもあるだろうが自分の想いを歌にしようという姿勢は「Stand By Your Man」への回答、というのは穿った見方か。

 

あすなろ「チェルシー

 BMXバンディッツやパステルズなどの1980年代・90年代のネオアコ勢を思わせるギター・ポップス。間奏のオルガンでFELTを思い出してしまうネオアコ・ファンもいるのではなかろうか。2人のGUMIによるハモリも非常に美しく魅力的だが、何より印象に残るのは甘酸っぱいメロディ。特にBメロからサビへの展開には胸をしめつけられんばかりで、ここだけリピートしたくなるほど。間奏後の歌詞にある「白い指先で遠い約束をした」には涙せずにはいられない。

 

room「story rider summer remix」

 エレキさんのリミックス。原曲はクラブで爆音でかけたくなるような曲だったが、こちらはドライブ中に爆音で聴きたくなるような曲に仕上がっている。今回のリミックス、思い出すのは1980~90年代のBlazeの一連のリミックス・ワーク。ラテンっぽいところが入るところもそうだが、ピアノやホーンの使い方など、様々なところにBlazeのエッセンスがある。しかし、この方向性で通せるのも見事なオリジナリティであり、roomさんには脱帽せざるをえない。

 

 

(Unedited stuff for VOCAMAGA / July. 2013)

 

 

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