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『声優論』はいかにして作られたか?

アニメ 告知

『声優論 アニメを彩る女神たち』がついに発売されました。

超特急で作った本ですし、前例のないものでもありますし、正直不安ではありますが、皆さまに楽しんでいただければと心より願っております。

 

 

声優論 アニメを彩る女神たち:島本須美から雨宮天まで

声優論 アニメを彩る女神たち:島本須美から雨宮天まで

 

 

 

というわけで、今回は内容の紹介をさくっとしてみたいと思います。

 

今回の本は、声優というものを自由に論じたいというのが私の頭の中にありました。
そして、声優ファンだけでなく、アニメ・ファン、映像というものに強く興味のある方、アニメにちょっと興味のあるサブカル層、批評クラスタにも届けようというのがありました。多くの層に届けてこそ、声優を論じる試みは広がっていくのではないかと考えたわけです。

そこで、筆者のラインナップに関しても、ひとつの切り口に固まらないようにということを考え、それならばいっそ全員バラバラの切り口で行く方がよいのではないかと思い、その路線で進めることになりました。

 


まず、コアな声優ファンに向けて、夏葉薫さんにご執筆をお願いしました。
濃い声優ファンの方であればご存知のように、夏葉さんは声優論の開拓者とでもいうべき方です。今回、再録という形で掲載しましたが、夏葉さんがかつて書いた桑島法子論は声優論の原点とでもいうべきもののひとつです。今回収録された他の論を読んでいただければわかるかとは思いますが、夏葉さんは最も王道な声優論を書いてくださったのではないかと思います。
また、アニメ「アイドルマスターXENOGLOSSIA」を軸にして、堀江由衣さん&田村ゆかりさん、喜多村英梨さん、井口裕香さん&名塚佳織さんを論じていくアクロバティックなスタイルは今回のハイライトのひとつだと思います。結果的に、夏葉さんは声優さんを論じることでアニメを論じたわけですが、その方法論は今回の本がアニメ論・キャラクター論までも照射する評論集になればと考えていた私にとって、まさに願っていたものでした。

 

 

次に小森健太朗さん。

そもそも今回の本は、ミステリ作家であり評論家の小森健太朗さんが2013年に刊行したアニメ評論集『神、さもなくば残念。』をきっかけとしてスタートしたものでした。

 

 

 

『神、さもなくば残念。』はアニメ作品の現象学的解明を目指したものとして書かれたわけですが、その本の中に川上とも子さんについて論じた文章がアニメ「AIR」論にありました。それが抜群に面白く、説得力もあったため、この方法論で声優について論じてもらえれば……と考え、そこから小森さんに声をかけて二人三脚でスタートしたのでした。

アニメの中での声優さんのふるまいを直観的に捉え、そこからいかに論じるか。評論でいかに魅せるか。小森さんの試みはアニメ・ファンと批評クラスタの方に届くのではないかと思います。

阿澄佳奈論での小森さんのスタイル。帯にもある「批評×声優」という文言を最も体現したのが、阿澄佳奈論ではないかと思われます。

 


文芸評論家の町口哲生さんによる評論は、メディア論に興味のある方、映像史的なものに興味のある方に強く届くのではないかと思います。文学を総合的に論じるように、声優さん、引いては日本独自の「声優文化」が論じられていますから。
花澤香菜論、釘宮理恵論においては、町口さんはさらに時代性まで論じようと試みます。「なぜ、その声優さんはその時代において求められるのか」――あるキャラクターを演じたからという単純な理由だけでなく、アニメ視聴者の精神性まで読み解こうという試みは実にスリリングです。

 

 

さて。過去いろいろと声優に関する考察を読んできた中で、ひとつ物足りなさを覚えていたことが私にはありました。それは、声楽的な見地から論じたものがほとんど見当たらないなということ。
そこで私は、ミステリ作家で声楽に詳しい深水黎一郎さんに原稿を依頼しようと考えました。そして、深水さんには、深水さんが普段プレーヤーとして親しんでいるゲーム「艦隊これくしょん」に出演している声優さんの声をテキストにして論じていただくことにしました。
はっきりいえば、深水さんはアニメをほとんど観ていません。ですが、そんな深水さんだからこそ、臆見なく、声優さんの発声法について論じることが可能ではないかと考えたわけです。その読みは当たったのではないかと思います。
深水さんの論考は、声優論のさらなる拡張を推し進めるものになったのではないでしょうか。

 


そして、最後に私です。
私は元々、渋谷系直撃世代のサブカル少年であり、アニメ・ファンというわけではありませんでした。そんな私がアニメを追うようになった経緯は以前こちらでも触れましたが、声優さんの声に興味を持ったからです(ポップス・ファンは声フェチな部分がありますからね)。声優→アニメという順番で興味を持つようになった私だからこそ、(重度なアニメ・ファンではない)アニメに少しでも興味のあるサブカル層に届けられる文章を書けるのではないかと考えました。声優のオタクである条件のひとつとして、そもそもアニメのオタクであるという項目があるかと思われますが、アニメをたくさん観ていない人にも声優さんに注目してもらえればというのもありましたし、そうではない人だからこその視点もあるべきではないかと思ったわけですね。――その試みが成果を出せたかどうかは、皆さんに読んで判断いただくしかないと思われます。

 

ご興味ありましたら、本屋さんやamazonなどで、お買い求めいただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。