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連想・発想の飛躍に酔いしれる~西澤保彦『さよならは明日の約束』を読んで

 

さよならは明日の約束

さよならは明日の約束

 

 

 今考えてみれば不思議に思えるあの出来事や言葉は一体なんだったのか。そのちょっとした疑問を起点に推論を重ねていき、過去の記憶を辿りながら真相に至る――そう、作中でも言及されているように、西澤保彦さんの『さよならは明日の約束』(光文社)はハリイ・ケメルマン「九マイルは遠すぎる」のような味わいの作品がずらり4編並ぶ連作短篇集だ。

 推理で到達する真相自体は正しいかどうかは確定できないものだが、提示された真相はどれも美しいものであり、説得力もある。発想の飛躍ぶりを楽しむ作品だ。「九マイル」タイプの作品は今までも様々な作家がトライしており、近年では米澤穂信古典部シリーズ〉の「心当たりのある者は」が有名であろう(2012年にアニメ化もされている)。

 

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 ただ、西澤の連作短編集が「九マイルは遠すぎる」よりも素晴らしいのは、最後に収められた「さよならは明日の約束」において、「パズル韜晦」以外の各短編で提示された真相がほぼほぼ正しいものであると保証される点である。この「パズル韜晦」にしても、西澤保彦の某作品の別解ともいえるものであり、2015年の西澤にしてみればこれも正しいということになるのだろう。
 記憶に残るとはなにか。記憶されるとはどういうことか。この作品のテーマは間違いなくそこであろう。
 
 青春ミステリとしてもすぐれた作品。文句なしに傑作。
 西澤保彦のここ数年の絶好調ぶりがよくわかる短篇集である。