2016年度上半期アニメのベスト5

 

 

『声優論』の共著者でもある2人が選んでいたので、私も2016年度上半期アニメのベスト5を選んでみた。結果は以下の5作品。

 

 

 各作品について

 

今年は『ズートピア』がバディものとして、普段ディズニー映画を観ない大人たちにも評価され話題となっていたが、実はテーマ的なものは『アーロと少年』にも被っている面があった。寓話性が高いからその辺り伝わらなかったのかもしれないが、もっと観られてもいいだろうという思いは強い。

美しさも苛烈さも込みで描いてみせた大自然の描写には言葉を失ってしまい、人間というのはちっぽけなものなんだなと、当たり前のことをあらためて再確認させられた。


なお、『アーロと少年』といえば、公開時に話題になったのが“ドラッグ体験”を描いたこと*1。ディズニー/ピクサーでドラッグ体験を描いたものとして『ダンボ』におけるピンクの象の行進があるが*2、正面切ってドラッグ体験を描いてみせた『アーロと少年』には驚かされた。

 

「Pet Sounds 50 Animated Music Video」というのは、ビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』50周年エディション発売に合わせて公開されたアニメーション。

 


The Beach Boys - Pet Sounds 50 Animated Music Video

 

1分50秒程度でCGもそんなにたいしたものではないのだが、内容が長年ファンをやってきた者にはたまらないものであり、『ペット・サウンズ』後の彼らの歩みを知っている者ならばじんとくる作品である。

 


ショートアニメーション「ツムツム」第19話

 

「ツムツム」は、「シドニアの騎士」や「亜人」などで知られるポリゴン・ピクチャーズが制作を手がけた作品。ディズニー・ツムツムとのコラボ作品だ。 

台詞を喋らないキャラクターたちの心情描写のようなものを表情や何気ない仕草で見せる演出、かわいさを全面に押し出した映像、わくわくするような冒険を短い時間で表現する構成力など、手間暇かけてしっかりと作り込まれた作品だと思う。

 

プリンス・オブ・ストライド」はドラマ・パート自体はそんなにたいしたことはないのだが、競技の見せ方、スピード感、色合い、音楽と映像の同期のさせ方が抜群にうまかった。効果音の使い方、選び方もセンスを感じさせられた。

 

昭和元禄落語心中」は落語、というか寄席の雰囲気をあそこまで活き活きと描けていたことが評価できる。演じている時の静と動の切り替えもうまく描いていたと思う。

 

なお、個人的にはディズニーが公式youtubeチャンネルに上げた次のシリーズもうまいなと思ったところ。 

 


DREAM BIG, PRINCESS 「ディズニープリンセス」その夢から、あなたの物語が始まる – I Dream

 

ディズニーだから作り得た前向きな作品。メッセージ性の高さ、カットアップ感覚には唸らされた。

 

アニメと体験~映像と空間の衝突と即興

また、広義の意味のアニメーションも入るのならば、「ワンス・アポン・ア・タイム スペシャルウィンターバージョン 2016」を「昭和元禄落語心中」の替りに入れたい。

 

「ワンス・アポン・ア・タイム」はシンデレラ城という“画面”にアニメーションを投影するプロジェクションマッピングだ。感動を共有させる、空間とアニメを調和させるという表現方法は、アニメの究極形態だと思う。 

 

不思議の国のアリス』における乱痴気騒ぎ、空間の上下が急になくなるような感覚、『シンデレラ』でのシンデレラ城全体に魔法がかかったような感覚には幻惑させられる。

塔の上のラプンツェル』におけるランタンが空に浮かび上がっていく感動的なシーン、実際にはない“奥行き”も用いながらダイナミックに描かれる『ピーターパン』における夜のロンドンを飛行するシーンにはため息をつかずにはいられない。

美女と野獣』のダンス・シーンにはうっとりとさせられるし、城全体を使ったガストンとビーストのバトルには手に汗を握る。ラストのメッセージもさすがディズニーといったところだろう。

 

www.tokyodisneyresort.jp

 

スペシャルウィンターバージョン 2016」は『アナと雪の女王』にスポットをあてた「ワンス・アポン・ア・タイム」のスペシャル・プログラムである。

 

ure.pia.co.jp

 

アナと雪の女王』のストーリーが「ワンス・アポン・ア・タイム」にも無理なく溶け込んでおり、ここがまず評価できるところ。しかし、何より評価すべきは映像と空間の衝突と即興だろう。 

 

「生まれてはじめて」でのアナのおてんばさは、空間に高低が可視化されたことでより際立つ。そして何より、「Let It Go」でのエルサ。

エルサの魔法と、歌、そして花火までもが組み合わさることにより、あのシーンにおけるエルサのつらさと不安とやけっぱちな希望がないまぜになったような気分が、よりダイレクトにこちらに伝わってくるのだ。 

 

「2015」ではアメリカ本国の音声を使っていたが、「2016」では音声が日本語吹き替え版のものになったことで、ウィンターバージョンはとりあえず完成した*3

松たか子さんの歌声が冬の夜空に響く中、エルサが手を振り上げるのに応じて、花火が上がる。これぞ映像と空間の衝突と即興である。

 

アニメを観るだけではなく、体験する。隣にいる人と共有する。
映画の時代に先祖返りしている部分もあるのだが、感覚は体験の方にアップデートされているのだなと実感するばかりである。

 

アニメと体験~掌サイズで共有される感動

逆に、スマホだけで配信・放映された『暦物語』は掌サイズでできる映像表現の究極形態になりえる可能性があり、期待していたのだが、次に挙げる2つの動画を観てしまった今となっては、もう少しやれる可能性があったのではないかと、惜しむばかりである(ただ、〈物語〉シリーズを掌サイズで放映できるんだという所には感動したわけだが)。

 

lyrical schoolの「Run And Run」 
※この動画はスマホからの視聴を推奨します

 


RUN and RUN / lyrical school 【MV for Smartphone】

 

アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」 
※この動画はスマホからの視聴を推奨します


「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」スマホムービー ★全画面でご覧ください

 

なお、掌サイズということでいえば。2015年の作品ではあるが、「ワンス・アポン・ア・タイム」を題材とした食玩「ハコビジョン (ワンス・アポン・ア・タイム)」は発想という意味では2010年代の最先端を行ってると思う。 

 

東京ディズニーランドのナイトエンターテイメントをご自宅で楽しめるグッズ “ハコビジョン (ワンス・アポン・ア・タイム)” 3月21日(土)より東京ディズニーランドで販売開始 | 【公式】東京ディズニーリゾート・ブログ

 

掌サイズ、つまり横で誰かと同じ画面を観るのならば、自然と頬を寄せあって観ざるをえないという体験を強いるこのメディアは、「ワンス・アポン・ア・タイム」にあるテーマとも相まって、この作品を最高のデートムービーに仕立て上げていると思う。

 

 

さいごに

苛烈で熾烈な物語。第1話でいきなり視聴者を裏切るような意外性の強い物語。萌えに特化した物語作り。ネタに思いっきり走った出オチ的な物語。異世界での英雄譚。

……そういった題材も確かに面白いのだが、私としてはもう飽きている部分が強い。
むしろ今は、映像表現としてどれだけ面白いことをやっているかに私の興味は強くある、という話。

 

 

なお、今年はこのまま行くと、

以上でトップ5は埋まりそうだ。

 

*1:発酵した木の実を食べた恐竜のアーロと少年が、木の実のもたらす幻覚作用により、様々な幻覚を見るシーン

*2:正確にいえば、アルコール体験。また、「クマのプーさん」における「ズオウとヒイタチ」は、夢の中という体裁をとっているので、ドラッグ体験とは見なせないが、あの描写もかなりドラッギーではあった。また、「ピノキオ」の喫煙シーンもドラッグ体験に近い描かれ方をしていた。

*3:来年は「アナ雪」にさらに特化したバージョンになるそうなので楽しみだ