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【告知】「本格ミステリーワールド2017」に寄稿しました

本日発売された『本格ミステリーワールド』(南雲堂、本体1,500円)に寄稿しました。

 

本格ミステリー・ワールド

本格ミステリー・ワールド

 

 

今年は評論原稿を1本寄稿し、鼎談に1件参加しています。

 

評論原稿について

評論原稿は「To Infinity And Beyond ~ディズニーから学ぶミステリーの可能性」というタイトルで、今年ウォルト・ディズニー・カンパニー/東京ディズニー・リゾートが公開した映画、動画、そして彼らか提供してきたサービスを振り返り、本格ミステリー、中でもサイバーミステリーがそれらから学べるところがあるのではないかという内容です。

一田和樹さんの『サイバー原発トラップ』、柳井政和さんの『裏切りのプログラム』、そしてゲームアプリ「Lifeline:クライシス・ライン」(3 Minute Games)について振れています。

 

原発サイバートラップ: リアンクール・ランデブー

原発サイバートラップ: リアンクール・ランデブー

 

 

裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬

裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬

 

 

Lifeline:クライシス・ライン

Lifeline:クライシス・ライン

  • 3 Minute Games, LLC
  • ゲーム
  • ¥240

 

なお、次の動画は私の論考でポイントとなる動画なのですが、ひょっとすると本が出る頃には削除されている可能性があります(ディズニー・シーでのハロウィン・イベントが終了しているため)。もし可能であれば、今のうち観ておいていただければ幸いです。できれば、スマホで。

 


ディズニーヴィランズ/Disney villains2016 スペシャル動画 東京ディズニーシー

 

ところで、「なぜいきなりディズニー?」という意見はあるかと思われます。
これについて説明いたします。

 

私は本格ミステリーを本格ジャンルの枠内のみで考えるのではなく、ポップカルチャーとして考えることを心がけております。これは、『本格ミステリーワールド2012』で私がはじめてミステリーについての原稿を書いて以来、一環して行ってきたことでもあります。

もっと言いますと、新本格に意識的に触れるようになった1990年から、ミステリーとしてよりも同時代のポップカルチャーとして新本格に慣れ親しんできた、というのが実情です。
これは、ポピュラー音楽であろうと、ファッションであろうと、ゲームであろうと、漫画であろうと、アニメであろうと、そう。そのジャンルがポップカルチャーとしてどういう立ち位置にあるのか、を常に意識して楽しんできました。

 

90年代渋谷系はDJ的な感覚が根付いていたという話があります*1。そして、渋谷系直撃世代の私にとっては〈ジャンルを横断して俯瞰する感覚〉〈サンプリングして1つの流れを構築する感覚〉というのはごくごく当たり前のこと。ゆえに、繰り返しになりますが、新本格も、本格ミステリーもポップカルチャーとしてどういう立ち位置にあるかを見極めながら、私は触れてきたわけです。

 

……という前提がある以上、本格ミステリーと他のポップカルチャーとの連関を読み取ろうというのは当然のことでして、今回はディズニーを選びました。
ディズニーを比較する対象として選んだのは、端的にいえば、ディズニーがエンターテインメントの保守本流にあり、そしてもっともグローバル化に成功したエンターテイメントだからです。ドメスティックなものではないからです。

「To Infinity And Beyond ~ディズニーから学ぶミステリーの可能性」は、そうした背景で書かれたものです。*2

 

余談ですが、サイバーミステリの最前線、あるいはインターネット史やサイバーセキュリティ史との対応についてご興味のある方は、下記のエントリもご参照ください。

 

ue-kaname.hateblo.jp

 

鼎談企画について

鼎談は「<黄金の本格>を通して見る、本格ミステリー十年史」というテーマで、参加者は小森健太朗さん、深水黎一郎さん、そして私です。

今年で10年目を迎える『本格ミステリーワールド』。同誌が選定する〈黄金の本格〉全八九作のラインナップを踏まえて、ここ10年間の本格ミステリーを振り返ろうという内容です。

2007年度~2013年度まで〈黄金の本格〉選考委員を勤めた小森さん、来年で作家生活10周年を迎える深水さんとともに、以下の4つのテーマについて語りました。


しかし、今回〈黄金の本格〉のラインナップを見直していて面白いなと思ったのは、投票形式で決まる『本格ミステリ・ベスト10』の上位10作品とそこまで被っていなかったこと。

たとえば、〈黄金の本格〉に選ばれた作品のうち、『本格ミステリ・ベスト10』のトップ10にもランクインした作品の数は以下のようになります。パーセンテージは、その年の〈黄金の本格〉の中で、『本格ミステリ・ベスト10』の上位10作にランクインした作品の割合です。

 

2007年度 4作品(黄金の本格は13作品) 31%
2008年度 6作品(黄金の本格は9作品) 67%
2009年度 4作品(黄金の本格は10作品) 40%
2010年度 2作品(黄金の本格は8作品) 25%
2011年度 3作品(黄金の本格は8作品) 38%
2012年度 3作品(黄金の本格は8作品) 38%
2013年度 3作品(黄金の本格は6作品) 50%
2014年度 3作品(黄金の本格は8作品) 38%
2015年度 2作品(黄金の本格は10作品) 20%
2016年度 7作品(黄金の本格は10作品) 70%

 

毎年年末に本格ミステリについてのムック本が2冊出るとして、選出方法に違いはあるものの優れた作品をはっきり呈示しようという企画が両方にあったとして、両方の結果が大差ないものであることほど面白くないことはないと思うわけですよ。カラーの違いがあるからこそ面白い。

たとえば、「ロッキング・オン」のアルバム・オブ・ザ・イヤーと、「ミュージックマガジン」の「ベストアルバム◯◯◯◯」の〈ロック(アメリカ・カナダ)部門〉〈ロック(イギリス)部門〉は、顔ぶれが異なっていた方が面白いという話。イベント的な意味で盛り上がるわけです。一方で、両方に顔を出しているものでも、高く評価されているポイントが異なっていたりして、そこも面白いわけですね。

まあ、身も蓋もない話をすると、違いがある方が健全という話もありますが。

それはさておき、〈黄金の本格ミステリー〉と「本格ミステリベスト10」の上位10作品がそこまで被っていないということにはほっとしましたし、こうでなくちゃと思ったものです。

 

さいごに

話が長くなりました。

とにかく、『本格ミステリーワールド2015』(南雲堂)は12月17日発売です。目次や詳細はこちらをご覧くださいませ。よろしくお願いいたします。

 

 

*1:私の見立てでは、DJ的な感覚というのは、渋谷系に限った話ではなく、サブカル層に根付いた感覚だと思います。

*2:なお、ご存知だとは思いますが、「To Infinity And Beyond」というのは映画『トイ・ストーリー』におけるバズ・ライトイヤーの台詞です。日本語訳は「無限の彼方へ さあ行くぞ!」