『本格ミステリーワールド』の思い出

すでに情報が出回っているようだが、南雲堂さんのムック『本格ミステリーワールド』が休刊することになった。いずれ南雲堂さんから正式なアナウンスはあるだろうから、ここでは詳しく書かない。

それはともかくとして、ミステリー読みとして、またミステリー業界にいる者としては残念だ。そして、非常に寂しくもある。というのも、私の“デビュー”の場が同ムックであるからだ。

 

本格ミステリー・ワールド2012

本格ミステリー・ワールド2012

 

 

デビューのきっかけ

私がはじめてミステリーについての原稿を書いたのは、2011年になる。ノベルゲームというジャンルについての文章だ。

 

ネメシスの虐笑S (講談社BOX)

ネメシスの虐笑S (講談社BOX)

 

 

小森健太朗さんの『ネメシスの虐笑』という作品がある。ゲーム*1が同梱された小説なのだが、同作品についての感想をtwitterで呟いたところ、それまでまったくやりとりのなかった小森さんにいきなりtwitter上で声をかけられて「『本格ミステリーワールド』に原稿を書いてみませんか?」と誘われた……というのが、私のデビューのきっかけだ。

 

1回こっきりでお終いかなと思っていたら、翌年2月に小森さんから新たにお題を出され、今度はアニメのヒロイン像とミステリの探偵像について『本格ミステリーワールド』に書くことになった。そして、2013年からは私から編集部にテーマを持ち込むようになり、今に至る。

私がミステリに関わることができるようになったのも、小森健太朗さんと南雲堂さんのおかげであり、非常に感謝している。


さて、今だから言える話ではあるが、私は元々日本のアニメをはじめとして、オタク文化にそんなに興味があったわけではない。むしろ不得手なジャンルではあった。

だが、デビューの経緯が経緯だっただけに、オタク文化に通じていると思われていたようで、(南雲堂さんに限らず)いただいたオファーもアニメに関係するものが多かった。対応するために、週に放送されているアニメから35本近くピックアップして視聴していたが*2、『本格ミステリーワールド』が無ければ日本のアニメをあれほど多く見る機会は私の人生に訪れなかったと思う。その点でも感謝している。

 

今まで『本格ミステリーワールド』に寄稿した原稿

過去に『本格ミステリーワールド』に寄稿した原稿は以下の6本になる。


2011年 「ノベルーゲムのこうしょう」

小森健太朗『ネメシスの虐笑』を切り口にノベルゲームとミステリの関係について。

 

2012年 「2012年テレビアニメとミステリーの侵犯関係」

アニメ「氷菓」、マンガ「AKB48殺人事件」、北山猛邦『猫柳十一弦の後悔』などについて。

本格ミステリー・ワールド2013

本格ミステリー・ワールド2013

 

 

2013年 「アニメ『ダンガンロンパ』は本格ミステリーの苗木となりえたか?」

アニメ「ダンガンロンパ」と北山猛邦ダンガンロンパ霧切』について。

本格ミステリー・ワールド2014

本格ミステリー・ワールド2014

 

 

2014年 「その呼応は赫奕――〈二〇一一年の想像力〉と本格ミステリー」

深水黎一郎『大べし見警部の事件簿』、北山猛邦ダンガンロンパ霧切2』、柄刀一『密室の神話』を切り口に、同年に放映された様々な深夜アニメをヒントに〈傭兵化する探偵〉というテーマについて。

本格ミステリー・ワールド2015

本格ミステリー・ワールド2015

 

 

2015年 「量産機のコンペティション~多重解決を保証する競技性について」

深水黎一郎『ミステリー・アリーナ』、井上真偽『その可能性はすでに考えた』を切り口に多重解決について。

本格ミステリー・ワールド2016

本格ミステリー・ワールド2016

 

 

2016年 「To Infinity And Beyond ~ディズニーから学ぶミステリーの可能性」

ウォルト・ディズニー・カンパニー/東京ディズニー・リゾートが公開した映画、動画、そして彼らか提供してきたサービス切り口に、サイバーミステリーの可能性について。 

本格ミステリー・ワールド2017

本格ミステリー・ワールド2017

 

 

個人的に、タイトルで一番気に入っているのは、「アニメ『ダンガンロンパ』は本格ミステリーの苗木となりえたか?」

内容で一番気に入っているのは「量産機のコンペティション」と「To Infinity And Beyond」だ。

逆に、タイトルで一番不満を覚えているのは、「ノベルゲームのこうしょう」。「考証」「哄笑」のダブルミーニングで付けたタイトルだったのだが、今となっては平仮名に開いているのが子どもっぽいというか、なんというか。やや間抜け。

内容で一番不満に思っているのは「その呼応は赫奕」。出来の悪いゼロ年代批評という感じ。自分が一番嫌いなタイプの論考を書いてしまった。思い起こせば、この頃は己の文化的出自に血肉としてないものをつなぎ合わせて、それこそ「イメージだけに加速度つけ話」していたように思う。

 

さいごに

独断と偏見、そして愛に満ちた「黄金の本格ミステリ」企画*3。とにかくヴォリュームが充実しすぎている「作家の計画・作家の想い」。切り口がとにかくユニークで、読み応えたっぷりな評論の数々。大胆な試みが魅力のムックだったと思います。残念です。

復刊はあるのか。別の版元に移籍して継続されるのか。CONTINUEに期待したいところです。

 

なにはともあれ。南雲堂のH野さん、今までお疲れ様でした。

*1:ジャンルはいわゆる“美少女ゲーム

*2:今はもう時間的に無理です

*3:ミュージック・マガジン」毎年恒例の年間ベスト「ベスト・アルバム」企画に通じるような内容だったと思います