「ファー・アウェイ・アイズ」はまだ聴こえているか?

『プーと大人になった僕』雑感

プーと大人になった僕』を観た。嗚咽した。

 


「プーと大人になった僕」日本版予告

 

ディズニーアニメの〈くまのプーさん〉に馴染んでる人は、吹き替えで観ると感動は五割増しだと思う。なにせ、ディズニーアニメの〈くまのプーさん〉で吹き替えを担当していた声優さんがそのまま起用されているからだ。*1
アニメでもナレーションを担当している青森伸さんが、本作でもナレーションを担当していて、青森さんの声が流れた時点で涙腺崩壊してしまった。「ああ、この映画はアニメと地続きなんだな」と思ったのだ。

 

そう。『プーと大人になった僕』はディズニーの〈くまのプーさん〉と地続きなのである。
たとえば、『くまのプーさん 完全保存版』(1977年)のラストでクリストファー・ロビンがプーに次のように語りかけるシーンがある。「大人に『なにするの?』って聞かれたら『なんにも』って答えてね」――今回の映画『プーと大人になった僕』がそのやりとりを踏まえたものであることは、ディズニー好きであれば、すぐに気づくだろう。

 

 
 
しかし、もうひとつ抑えておいた方がよいのが、『くまのプーさん』(2011年)だ。同作で描かれるのは、クリストファー・ロビンのしばしの不在の間に起こったプーたちの物語。ロビン視点でいえば、新学期が始まって「なんにもしない」ができなくなったロビンの物語である。同作のラストにおいて、クリストファー・ロビンはプーに次のように言う。「僕のことを忘れないって約束して」

 

くまのプーさん (吹替版)

くまのプーさん (吹替版)

 

 

今回の『プーと大人になった僕』は、三十年以上もプーたちのことを忘れてしまっていたクリストファー・ロビンの物語である。2011年版において、クリストファー・ロビンのしばしの不在であれだけ取り乱していたプーたちを観てしまった僕としては、プーたちがどういう想いで三十年間も過ごしてきたのかを想像するだけで、胸が引き裂かれそうになる。

だから、プーたちがクリストファー・ロビンの前に現れて、昔と同じように動く様を見て、泣いてしまったのだ。まさか、「ワンダフル・シング・アバウト・ティガー」を歌いながらぴょんぴょん飛び跳ねるティガーを見て、あんなに泣いてしまうとは思わなかった。*2

 

ディズニーランドのアトラクション「プーさんのハニーハント」で、ライドから降りて左側に進むとクリストファー・ロビンの部屋がある*3。そこで提示されているのは――プーはクリストファー・ロビンが子どもの頃に大事にしていたぬいぐるみである。100エーカーの森とは、ロビンの空想の世界である――だ。2011年版でもスタッフロールで、そのことは明示される。本作はそこを前提とした上で、大人になったクリストファー・ロビンが見失ってしまったものを描くのだから、ぐっとくるものがある。ぬいぐるみだという前提のもと、ロビンにとってはただのぬいぐるみではない友だちのプーというものを描くのである。

 

しかし、これで俄然気になってきたのは、『トイ・ストーリー4』はどうするのかということ。同じディズニーでこの路線のストーリーを描くわけにはいかないから、どう捻ってくるのだろう。そっちも気になる次第だ。

*1:プーだけは、八代駿さんが2003年に、亀山助清さんが2013年に亡くなったこともあり、かぬか光明さんに交代

*2:直後、隣に座っていた親子が途中で私から離れた席に移動したのは見逃さなかったぞ

*3:右側に進むと、ショップにたどり着く。かわいいプーのぬいぐるみがあるのは右側だ